Interview インタビュー

「わからない」を認め、患者一人ひとりに「寄り添う」相談員の仕事

相談課 相談員 藤江優香子

身近にあった病気、医療を仕事にすると決めて

医療に興味をもったのは、父が難病の脳の悪性リンパ腫を発症したのがきっかけでした。最初に志望していたのは教師でしたが、医療業界への興味を捨てきれず、大学受験のセンター試験3ヶ月ほど前に進路を医療業界へ変更しました。ただ自分は看護師には向いていないと思ったので、臨床検査技師という職業があることを知って目指すことにしました。しかし、臨床検査技師の学科を受けるための科目を高校で受講しておらずセンター試験が意味を成さなくなってしまい、進路変更をしても行ける私立の大学一校に絞って受験しました。結果として、4年制大学の臨床検査技師の学科に入学することができました。その後、大学で学び卒業し、臨床検査技師の国家資格を取得して、地元の総合病院で臨床検査技師として勤務し始めました。

臨床検査技師とは、元々は医師の仕事であった患者さんの検体の検査業務を担う仕事です。血液検査や尿検査などで採取した検体を機械にかけて、どういうものかを探っていくため、表立って患者さんと接するのは、患者さんの身体自体を調べる採血の時や超音波の検査くらいで、検査室で顕微鏡をのぞいたり、機械を動かしたりなどの裏方作業が主なので、臨床検査技師という職業を知っている人はそこまでいないのではないでしょうか。検査結果についても、結果の値を伝えることはできても、判断を伝えると診察になってしまうので、決して医師の領域に入ってはいけない法的な制限、拘束力などもあります。

検査技師として働き始めて半年ほど経ったころ、持病が悪化し勤務が難しくなり、退職をして自宅で療養をしていました。持病は難病に指定されている「クローン病」という消化管全体に問題が起きる病気です。現代の医療では原因が解明されておらず、口の中の口内炎からおしりの痔まで、消化管に症状が起こります。私の場合は「腹痛」が主な症状です。

クローン病は「大腸型」「小腸型」「大腸小腸型」の大きく3つに分かれていて、消化管全体に問題が起きるとはいっても、基本的には腸に症状が出ます。私はその中でも一番重い「大腸小腸型」というタイプで、大腸に潰瘍があって小腸に狭窄があります。小腸や大腸は食べ物が通るところなので、消化に悪いものが炎症を繰り返して狭くなっているところを無理やり通ろうとすると断続的に激痛が起きてしまいます。解消方法もないので、病院に救急車で行って痛み止めの点滴をしてひたすら待つくらいしか対処ができません。食物繊維の過剰摂取ができないため、きのこや海藻類などの食事制限があり、好きだけど食べられないものが多く、食事に気をつけないと症状が出てしまったり、ストレスで悪化したりしてしまいます。

 

医療の世界でより患者さんの近くへ、相談員への挑戦

仕事を辞めたタイミングで次の仕事を考えた時に、医療業界にはまだ惹かれる思いがありましたが、臨床検査技師としてはやっていける自信がありませんでした。加えて、臨床検査技師として働いていた頃、患者さんと接する機会が少ない仕事だと覚悟はしていましたが、患者さんともう少し関わりたいという思いがありました。仕事の中でも、採血の時間など患者さんと接することができる時間が楽しみだったので、今更ながら、自分にはあまり合っていない職業なのかなと感じていました。

そんな時、総合病院で働いているときの同期に男性のソーシャルワーカーがいたことを思い出しました。彼がバタバタ忙しそうに院内を走り回っているのを時折目にしていて、ソーシャルワーカーがどのようなことをしているのか、当時は自分の仕事に追われていたこともあって詳しくは知りませんでしたが、患者さんと接する時間が長い仕事だという印象は持っていたので、ソーシャルワーカーという職業には漠然とした興味を持っていました。

社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持っていない私でも、ソーシャルワーカーができるところはないか調べたところ、ときわの「相談員」を見つけ、資格がない私でも挑戦できるんだ!と思い、応募しました。ときわは広く門戸が開いていたのでありがたかったです。

 

在宅医療に触れ、経験を活かしてやりがいを見つける

相談員の仕事は、日々勉強です。

入職前にホームページなどをみて情報としては知っていましたが、実際に勤務をしていると在宅医療の重要さをひしひしと感じますし、通院できない方の家が診察室になり、そこで診療を受けられるのはすごいことだなと思います。総合病院に勤務している時は、患者さんが来るのを待っているだけだったので、こちらから診療に行くという発想自体がなく、とても新鮮で、それをサポートできる相談員の仕事はすごくやりがいがあると感じています。

例えば、患者さんが何もわからない中で困って電話をかけて来てくださって、訪問診療についての相談に最初に乗る瞬間や、自宅に事前訪問に伺い説明する時に、私の説明で在宅医療がどういうものかわかってもらえた瞬間にやりがいを感じます。「訪問診療っていいものなのね」「先生に来てもらえるのはありがたい、ぜひお願いしたい」と言ってもらえた時はすごく嬉しいです。臨床検査技師をしていた時とは違った患者さんやご家族との直接的な触れ合いがあり、制限はあるにしても相談員の方が自由度が高く、自分の言葉で患者さんに安心してもらうことができる立派な職業だなと思っています。

一方で、臨床検査技師として学んできた病気の知識は、今の仕事でも迅速な判断をすることに役立っています。例えば、小児の患者さんの場合、突発的な熱などの普段とは違う様子に親御さんが驚いて電話をかけてきたり、高齢の親を自宅で介護しているご家族の方から電話がかかってきた時になんとなく緊急性の高さがわかります。そういった時に、自分なりの判断をして先生に話を通す前に先にしておいた方がいいかもしれない行動を取ることができているというのは日々感じています。また、医療業界は病気の名称などがアルファベットの略称で書かれることも多いですが、そのような用語も病院からの問い合わせがあった場合にすぐにわかるので役に立っている部分だと思います。

相談員の仕事では、どういうアプローチで地域のケアマネジャー、訪問看護、薬局、ヘルパーなどの専門職とつながりを持ちながら患者さんに対して支援していくかを考えるのが一番大変で重要な役割です。ケアプランを作成してくれるのはケアマネジャーさんですが、そのケアマネジャーさんと当院

の橋渡しの役目は相談員にしかできないことなので、当院の診療が滞りなく行えるように、かつ、患者さんが安心できるように、調整をすることが一番重要です。私はまだ、ときわに入職して2年ほどですが、少しずつ地域との繋がりもできてきて、ケアマネジャーさんから「藤江さんに相談したい」といった電話がかかってきた時はすごく嬉しいですね。

 

人と出会い、多様な考えから広がっていく視野

ときわに入って視野が広くなり、物事の捉え方が柔軟になりました。理事長の小畑先生の考えには柔軟性があり、総合病院では経験しないような、新鮮な発見を毎日しています。入職して一番衝撃的だったのは、先生がとにかく優しいことです。総合病院では先生に「忙しいからあとにして!」と突っぱねられることが多くて、様子を伺いつつ業務を行っていました。ときわの先生は忙しくても「いいですよ」「こっちでやっておくので大丈夫ですよ」と快く対応してくれます。忙しさの中にも余裕をもって、コメディカルとの連携を積極的に取ってくださる先生方と一緒に働けることが毎日嬉しいです。

また、自分自身の考え方にも変化がありました。私が対応した小児患者さんのご家族で、医療的ケア児を生んだお母さんの話です。当院では、兄弟のどちらかが医療的ケア児で大変だから来てほしいというケースがあります。ただ、そのお母さんはケアが必要な子のことを受け入れ、認めることができず、健常児の兄弟にばかりかまってしまう様子がありました。総合病院で働いていた頃の私だったら、「自分の子どもなんだから愛さなくてどうするの?」と思っていたはずです。しかし、ときわに入職して小児科の先生の考えに触れたとき、「もちろん愛せるならそれに越したことはないけれど、生んでみないとわからないこともある」ということに気付かされました。医療的ケア児や障害を持った子どもを生んだお母さんの気持ちは、生んでいない私にはわからない部分が絶対にあるはずです。そこを自分自身で認識しないままご家族に接することは失礼なことだと思っています。子育てをしていく中では、楽しいことや嬉しいことだけではなく、つらいことや大変なこともあるのが当たり前です。また、お母さんは「その子のお母さん」というだけの存在ではなく、その人自身でもあるのです。お母さんにもお母さんの人生がある。他者が否定できるものではありません。それを忘れず、その子だけではなく家族も一緒に見つめる必要があるのだと思い、「肯定もできないけど、否定もしない」という考え方が私のベースのひとつになりました。私自身の相談員としての姿勢としては、全ての患者さんに対して、「倫理に反することは絶対に許してはいけないけれど、その患者さんの考え方自体を尊重すること」「患者さんの考えていることを完全に理解することができなくても、できる限り寄り添うこと」を大切にしています。

職場の環境については、体調を崩してしまったときや持病でストレスや疲れが溜まって色々な症状がでた時には、突発的にお休みをいただくことがありますが、相談課のなかでフォローし合う体制がしっかりできているので、お休みは取りやすく、とてもありがたいです。もちろん自分の仕事があるので、それを完全に他の相談員さんにおまかせするのは申し訳ない気持ちはありますが、お願いしても安心だなと思える環境です。私も課長補佐として、いざという時にはフォローし合える体制づくりは意識していて、他の方が休みたいという時にも、声を掛け合ってみんなで助け合えるようにしています。子育てをしている人もたくさんいるので、お子さんの発熱で帰らなくてはいけないときも、他の相談員が他拠点へフォローしに行くなど、しっかりと相談課内の連携がとれています。

今後は相談員として更にステップアップするため、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取ることを目指していきたいです。臨床検査技師とそれらの2つの資格を持っていたらできることも広がると思いますし、きちんと裏付けのある知識でより一層患者さんのために、法人のために、働きたいと思っています。また、新しく相談員として入職してくる方達をしっかりと育てていきたいという気持ちがあるので、社会人としても成熟できるように頑張りつつ、相談員としても、もっと視野を広げていきたいと考えています。

藤江優香子 相談課 相談員

藤江優香子 相談課 相談員

2019年3月大学を卒業。国家試験を受験し資格取得後、地元の総合病院で臨床検査技師として勤務。持病(クローン病)が悪化し勤務継続困難となり退職、その後しばらく病院・自宅で療養。総合病院勤務時の同僚がソーシャルワーカーだったことで興味を持ち、2020年9月ときわに相談員として入職。現在、相談課課長補佐。