インタビュー
一般企業から看護師へキャリアチェンジ 在宅看護だからこそ実現できる 「寄り添う」医療の形
諦めていた看護師を目指しキャリアチェンジ
私は、実は学生時代から看護師を志望していたのではなく、一度他業種に就職してから看護学校へ再入学し看護師になりました。高校卒業後、はじめは人と関わる仕事に就きたいという思いから、航空関係の専門学校でマナーや接客を学びました。卒業後はもともと鉄道に興味があった為、鉄道関係の会社に就職し新幹線でのパーサー職として切符を見たりワゴン販売をしていました。その後、知り合いの誘いもありアパレル関係への転職を経験しました。アパレル関係ではお客さまの好みに合わせて商品の提案をしたり、コミュニケーションをとり相手の求めているものを提供することはとても楽しかったのですが、販売をしていく中でもっと根拠を持って仕事をしたいと思い続けていました。看護師を目指したのはそのような自分の希望が叶えられるのではないかと思ったからです。
もともと専門学校へ行く前から看護学校には興味がありましたが、学力に自信がなく当時は受験することなく諦めてしまいました。しかし、30歳が近づき、卒業までに3年間かかる看護学校を目指すのは今が良いきっかけではないかと思い、27歳の頃ダメもとで受験したところなんと合格することができました。
私の通うことになった看護学校は、在宅を経験されている先生が多く在籍していました。また学校のカリキュラムとしては珍しく、休みの日に地域のボランティア活動に参加したり、お昼休みには近所の団地に住むご高齢の方を訪問し、一緒に食事をしたり、学校祭では地域の方を招いたりとさまざまな地域活動をし、その活動から看護は病院だけではなく在宅でも出来ることを知りました。また、地域での活動は授業の一環ではありましたが「ありがとう」を身近に感じることができました。
看護学校での経験から在宅看護の道へ
看護師免許を取得し一番最初に勤めた急性期の病院では、もっと親身になり寄り添うことが大事と分かりながらも日々業務をこなすことに精一杯でした。看護師になる以前の接客経験では、呼び止められた人に対して一人ひとり向き合うことができていたのですが、急性期病院では次第に多くの人の要望に答えられるような効率を重視したコミュニケーションの形を模索していかなければいけないのかなと感じるようになってしまい、それは私の目指す看護師像ではありませんでした。そんなときに思い浮かんだのが、看護学校で経験した在宅看護です。在宅看護であればその方の生活に寄り添いながら医療を提供し、その方とまっすぐ向き合うことができるのではないか、そんな考えから在宅看護への転職を決意しました。どういった形の訪問看護を選ぶのか看護師としてのキャリアが短い中で迷いましたが、訪問看護は一人で患者さんの家に行くケースが殆どで在宅の高度な知識や経験を必要とされる一方、訪問診療では先生と一緒に訪問するため常に学ぶことができ、自分のやり方次第では成長しやすい環境だと考え訪問診療の看護師を選択しました。
「一人ひとりに寄り添う」目指していた看護師像の実現
訪問診療、在宅看護の現場で学ぶことはたくさんあります。私も最初は驚きましたが、腹水穿刺や輸血など病院とほぼ変わらない処置をときわは訪問先で行っていました。実際に当院の患者さんで、末期がんで死期が近いことを知らずに退院された方がいました。ご本人がご自身の状態をすぐに受け入れることは難しかったのですが、ケアマネジャーや訪問看護師、デイサービスの職員など、全員でご本人のフォローを行いました。貧血時には毎週輸血を行なっていたのですが、輸血を行った事でご家族やお孫さんと焼肉を食べに行くことが出来たと聞いた時には、輸血をしたことでただ元気になっただけではなく患者さんがご家族と思い出を作るサポートができたことを実感しました。また、病院とは違った、ご自宅で過ごすその人らしい生活を送るためのサポートができることが在宅ならではの『チーム医療』だと感じました。
母親になり理解が深まった、子供との関わり方や子供に対する親の気持ち
私は2022年に出産し、産休、育休を経て現在は子育てをしながら働いています。復帰当初は1年ぶりの仕事でついていけるか不安でしたが、みなさんが温かく迎えてくださいました。仕事と子育ての両立に関しても、保育園のお迎えに間に合うような訪問ルートへの調整や、職員からの声掛けなど、子育てへの理解や気遣いをありがたく思っています。また、子供の体調不良などの急なお休みが取りやすいことも、ときわの子育て支援で良かったと思うことの1つです。お休みを取る際の手順も簡単なので、子育てで忙しい朝の時間には大変助かっています。なかなか忙しい中で目標を作って行動をおこす事は正直難しいですが、母親になり、以前よりも子供との関わり方や親の子供に対する気持ちへの理解が深まったと思っているので、今後は小児医療への理解をより深めていけたらと思っています。
患者さんから学びながら、親しみのもてる看護師に
私は今、すごく成長しやすい環境に身を置くことができています。患者さんやご家族からは在宅ならではの知恵を学ぶこともありますし、患者さんから「こうやるといいんだよ」と教えていただくこともあります。在宅は患者さんのテリトリーの中に入っていくので最初は戸惑いもありましたが、今では一人ひとりの生活の工夫が面白く、その方特有の経験を学びとして得ることができています。また、ときわには看護師としてさまざまな経歴、経験のある方が多く、看護師同士や院内での情報共有もチャットを使用していることで他の看護師さんの経験が見えますし、一人の患者さんに対してクリニック全体でサポートできているように感じます。この環境を活かして、高齢者に限らず小児在宅など幅広い分野を学び、たくさんの経験を積んでいきたいです。在宅医療の看護師だからこそ、患者さんやご家族との信頼関係を構築し、親しみのもてる看護師になりたいと思います。