インタビュー
介護の視点を活かして、患者さん一人ひとりへ向き合う相談員に
幼い時に感じた問題意識から、介護の道へ
ときわに入職するまで、私は一貫して介護業界でキャリアを積んできました。その原点は、小学生の頃に、大好きだった祖母が曾祖父の介護疲れの末、病に倒れて亡くなったことです。その姿を目の当たりにし、幼いながらも問題意識を抱いたことが、介護の道へとつながりました。
当時は介護サービスが浸透しておらず、閉鎖的な地域性もあって「介護は身内でするもの」「恥ずかしいこと」と考えられていた時代でした。家族も頻繁には手伝えず、常に1人で介護をしている状態だった祖母が、週に1回、1時間だけのヘルパーさんの訪問をすごく楽しみにしていたことを覚えています。今振り返ると、その時間が祖母にとって唯一の自由な時間だったのだと思います。最期を病院で迎えた祖母の姿は、子ども心に大きな衝撃を与え、ずっと心に引っかかり続けていました。
大学は経営学部に進学しましたが、福祉の現場を知りたいという気持ちが消えず、学業のかたわら、地域密着型通所介護施設でアルバイトを始めました。そこで現場の厳しさと仕事のやりがいや意義を知り、「介護者・被介護者ともに充実した生活を送れるよう、介護サービスの普及に貢献したい」と考えるようになりました。
大学では工場などの生産ラインの技術経営を学び、卒業論文でも「介護現場に技術経営の理論を導入する」というテーマで研究をしていました。業務の効率化や、スタッフのスキル均一化を進めることで、離職率の高さやハードな労働環境を改善し、職員が働きやすい環境を作ることができるはずだと考えていました。まずは現場で経験を積み、将来的には経営に近い立場で仕事がしたいという、明確な目標を持って介護業界への就職を決めました。
利用者一人ひとりに向けた環境づくり
最初に勤めたのは、普通の古民家を利用したお泊りデイサービスでした。あえてバリアフリーにせず、段差に気をつけて歩くことで、注意力と筋力を維持させるという方針のもと、「その方にとって本当に良い環境とは何か」を深く考える視点が養われました。
現場では、自分のアプローチが上手くいった時に大きなやりがいを感じていました。例えば、認知症の方は、自分がなぜデイサービスにいるのか理由が分からなくなってしまい、帰宅願望が出てしまうことがあります。その方が安心して帰宅時間を迎えられるよう、どのようにしたら居心地が良く過ごせるのか、その場所にいる理由を試行錯誤しながら作っていきました。本人の意欲があれば、生活に関わる取り組みを積極的にお願いしていました。専業主婦として長年家事を担ってこられた方も多いので、「一緒に家事をやってほしい」とお願いすると、「自分がやってあげなければ」という前向きな気持ちになってくれて、意欲的に取り組んでくださることも多かったです。ただ、うまくいった方法が翌日も同じようにうまくいくとは限らないので、毎日いろいろなパターンで提案していました。
そうした工夫の結果、落ち着いて一日過ごすことができた時は達成感を感じましたし、逆に提案がうまくいかず穏やかに過ごせなければ、その経験を次に活かすように考えるなど、トライアンドエラーにすごく面白味を感じていました。
その後、社会福祉主事の資格を取得し、生活相談員として利用者さんの目標を立てるなどの相談援助業務に携わりました。
生活相談員になってから、その重要性を感じることがたくさんありました。介護職員の時は目的もなくレクリエーションを提供をしていましたが、生活相談員は計画書の作成をする必要があります。デイサービスでいえば、利用者さんごとに作成されたケアプランに基づいて通所介護計画書を作成します。ケアプランには、その方の生活背景などを踏まえたうえで、自宅で生活するための目標が設定されているので、「何のために支援をするのか」が明確です。例えば、「近所のスーパーまで1人で買い物に行けるようになる」という長期目標がある場合、それに向けて身体機能を落とさないように歩く必要があります。それを念頭に通所介護計画書を作成すると、支援内容にも明確な目的が生まれます。
歩行機能の維持が必要な方であれば、近くの公園まで外出するなど、具体的な方向性を決められるようになり、目標につながるレクリエーションを考えるようになります。
この経験を通じて、一人ひとりの目標に合わせて支援を組み立てる力や、目的に沿った活動計画を立てる力が身についたと思います。
在宅支援の知見を広げるために医療の世界へ
さらに経験を積むため、ショートステイ付きの特別養護老人ホームへ転職しました。しかしそこでは、多くの入居者に対して限られた職員数で機械的に対応せざるを得ない環境がありました。そのため、施設にいる間に身体機能が低下し、自宅へ戻る頃には歩けなくなってしまう方もいるという厳しい現実がありました。
私は、「自宅に帰ることを前提とした過ごし方」を徹底しようと、現場改革をしていましたが、その矢先に異動の辞令が出ました。その法人で腰を据えて改革を進めることは難しいと感じたこと、そして改めて自分は在宅生活を支援する仕事が好きだと再認識したことから、転職を決意しました。
医療法人に勤めたいと思った理由は、それまでは介護認定を受けた方々との関わりのみで、介護現場では接する機会のない方についての知識や、医療的ケアに関する知識が乏しいと感じていたからです。多様な方々の在宅生活を支援するためには、介護だけでなく医療についても幅広い知識を身につける必要があると考えていました。
そうして医療法人の求人を探すなかで、ときわと出会いました。訪問診療は当時の私が最も携わりたいと考えていた領域でしたし、法人理念の「人に寄り添い、未来に挑む。」を見て、「困っている人をたくさん助けたい」と考えている私には魅力的で、まさにこれだなと、ビビッときましたね。
ただ、応募当時は介護業界での経験しかなく、自信はありませんでした。正直なところ、半ば駄目元で「相談課」へ応募をしたのですが、書類選考通過の連絡をいただいたときは、本当に嬉しかったことをよく覚えています。
過去の経験を活かし、福祉の専門職として医療に関わる
ときわに入職した当初は、職場に医師がいる環境にとても緊張していました。それまでは仕事で医師と接することがなく、まったく異なる専門領域の方々と感じていたため「私なんかが意見してよいのだろうか」と戸惑いました。
しかし、ときわの先生方は優しく、フランクに話しかけてくださる方が多いです。ときわではビジネスチャットでのコミュニケーションが多いので、初めは緊張していましたが、今は臆せず話したり、意見を伝えられるようになりました。
医学的なことは医師の専門ですが、福祉の視点については相談員だからこそ見える部分があります。「こういった懸念点があるのではないか」「このアプローチの方が患者さんにとってより良いのではないか」という意見を伝えたりしています。以前までは医師というだけでフィールドが違う人のように感じていましたが、今は自分自身の経験や知識を存分に活かして、福祉と相談援助のプロとして意見をすることも必要だと思っています。
また、介護職時代に培った視点も役に立っています。排泄状況や日常生活の動作など、一見すると診療とは関係のない情報も把握していることで、患者さんの解像度が変わっていきます。当院は高齢の患者さんが多く、介護保険制度の知識や、ADLの把握、ケアマネジャーとの連携においても、これまでの経験を活かしてスムーズに業務ができていると感じます。
一方で、小児や重度心身障害のある方、若年のがん末期の方などへの対応や接し方はこれまで経験がなく、初めは全く想像もつかない状態で難しいと感じました。そのため、患者さんの診察に同席し、理解を深めています。
特に、小児患者さんの場合は、高齢者支援とは異なる難しさもあり、言葉選びや接し方により一層気を配るようにしています。そんな中で、「担当があなたでよかった」「Fさんだから話せる」と患者さんやご家族の方から感謝されたときに、とても嬉しくやりがいを感じています。
業務をするうえでのこだわりは、一つひとつをおざなりにしないことです。分からないことがあれば調べ、それでも分からなければ周囲に聞くようにしています。タスクはできるだけ早めに進めますが、患者さんが関わることだからこそ、流れ作業にせず、その方の立場に立って考えることが大切だと思います。
それは自分が逆の立場に立った時にしてほしいと思うことであり、これからも大事にしていきたいと思い、日々取り組んでいます。
ゆくゆくは福祉全体を盛り上げられる人材を目指して
相談課は、皆さん親切ですし、表面的な優しさではなく、本当に相手のことを考えて接してくれていると感じます。
相談課の業務では、多職種とよく連携をしますし、対外的な連携や、患者さんやご家族とのやり取りをするので、人当たりが良く、相手の立場を考えられる方が多い印象です。
勤務拠点が違うと直接会う機会が少ないですが、オンライン会議などを通じて、日頃から連携が取れていると思います。
相談員の仕事は非常に幅広く多岐にわたりますが、いわゆるパイプ役のように、当院と患者さんの間に立って対応したり、関連職種とのやり取りや相談を受けています。救急搬送の調整やケアマネジャーとの担当者会議など、患者さんに関わることの周辺業務を行います。
このように、さまざまなことに対応するので、決まったルーチン作業はあまりないです。週に何度かは、これまで対応したことのないものを調べたりしています。そのたびに対応できる領域が広がっていくので、仕事していて飽きないですね。積極的に新しいことに挑戦したい方や、向上心・知識欲のある方には、とてもやりがいのある仕事だと思います。
また、これまでの職場とは異なり、ときわはお休みをしっかり取ることができるなど、職員を大切にしてくれる環境なので、充実した気持ちで働いています。
今はまだ学ぶべきことが多く、すぐに達成はできませんが、介護から医療へと領域を広げた今、将来的には再び介護業界に戻り新しいことを始めたり、業界をより良い方向へ変化させていきたいという思いが根幹にあります。新しい事業や企画にも積極的に携わりながら、介護業界や福祉業界を良くして盛り上げていきたいという、漠然とした願望ではありますが、その実現に向けて必要な改革や挑戦を続けていきたいと思ってます。